こんにちは。
今回のブログでは、本教室で指導している沖縄の弦楽器「三線(サンシン)」についてよくいただくご質問にお答えします。
今回取り上げるのは、
「三線(サンシン)」を「蛇皮線(ジャビセン)」と呼ぶことはあるのでしょうか?
というご質問です。
ここでは、このご質問にお答えするとともに「三線(サンシン)という呼称についてさらに深めていただくため、
・「三線」を「蛇皮線」と呼ぶことについて
・「三線(サンシン)」という呼称が定着するようになった過程
の二点を解説してみたいと思います。
※三線とは?三味線との違いや購入費用・練習方法などを徹底解説!
「蛇皮線」は他府県人の言い方
まずは「蛇皮線(ジャビセン)」という呼称についてお話しします。
「蛇皮線」とは他府県の人が日本の伝統楽器「三味線」と区別するために用いた名称です。
「蛇皮線」という表記は他府県の人が記した文章や新聞記事に良くでてきますし、現在他府県に住んでいる私の実体験でも「蛇皮線(ジャビセン)」と呼んでいる方によく出会います。
その一方で、沖縄に住んでいた頃、三線のことを「蛇皮線(ジャビセン)」と呼んでいた人に一度も会ったことがありませんでした。
なお『沖縄民俗辞典』(吉川弘文館、2008年)という辞典で「サンシン」を引いてみると次のような記述があります。
「沖縄の人たちはジャヒセン、ジャビセン、ジャミセンといった呼び方をしないし、そういう呼称をきらう」
沖縄ではかなり違和感がある呼称だということを知っておいてください。
「三味線」と表記することが多かった
では沖縄でずっと「三線(サンシン)」と表記していたかというと、そうとはいえません。
ここからは場所を沖縄に移しましょう。
沖縄では最近まで三線の表記は様々でした。
例えば、同じ時期に出た資料を見ても・・・
・『沖縄芸能大鑑』(月刊沖縄社、1983年):「三絃」と書いて「サンシン」と読ませています。
・『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社、1983年):索引に「サンシン(三味線)」とあり、「三線とも表記する」と書かれています。
表記が統一されてなかったことがよくわかりますね。
そんななか文字の表記として一般的だったのは「三味線」でした。
例えば、沖縄が本土復帰するまでに11丁の三線が文化財指定されています。
これらの指定名称は「三味線」でした。
300丁以上の貴重な三線のデータを収録した記録集『琉球三味線宝鑑』(沖繩芸能保存会、1954年)など、三線に関する重要な出版物も「三味線」と表記されていました。
三線店も多くが「〇〇三味線店」と名乗っていました。
呼び方についても、現在沖縄で「シャミ」「シャミセン」と呼ぶ人たちが結構いるように、必ずしもみんなが「サンシン」と呼んでいたわけではありませんでした。
沖縄の各地や奄美諸島に行けば方言での様々な呼称があることでしょう。
いろいろと興味は尽きないですが、ここでは呼び方・表記は統一されてこなかったということを確認しましょう。
沖縄では「サンシン」「シャミセン」のほか様々な方言での呼称があり、表記としては最近まで「三味線」と記される場合が多かったことを知っておいてください。
「三線(サンシン)」への統一
ではなぜ「三線(サンシン)」という表記・呼び方に落ち着いたのか。
それは、1994(平成6)年、新たに9丁の三線が文化財指定されたさい、指定名称を沖縄固有の「三線(サンシン)」へと変更し、統一を図ったからです。
その理由は、用語としての蓋然性のほかに
・沖縄県民はもともと三線(サンシン)と呼んでいる事実があること
・歴史的な使用があること(1600年代前半の資料に三線職人さんのことが「三線打」と記されています)
・身近な国語辞典でも三線の規定がきっちりされていたこと
だったそうです。
これを機に「三線(サンシン)」という表記・名称に統一されていきました。
現在の三線職人さんの組合も「沖縄県三線製作事業協同組合」と名乗っています。
ただ統一したからといってみんなの日常生活での呼び方がいっぺんに変わるわけではなくて、さきほどお話ししたように沖縄では普段の会話のなかでは、「シャミ」「シャミセン」などと呼ぶ人が結構多いですね。
それぞれの表記が使われてきた歴史や様々な方言での呼び方のなど興味は尽きませんが、今回は一般的な呼び方・表記の正しい理解をしていただくことに絞ってお話いたしました。
ぜひご参考にしていただけたら幸いです!
▽こちらもあわせてお読みください▽
※沖縄三線にはなぜ蛇(ニシキヘビ)の皮が張られている?│蛇皮が使用され続けた理由を解説
※三線(さんしん)の歴史とルーツを紹介│沖縄にいつごろ伝わった?
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三線(さんしん)の始め方は?楽器初心者にもおすすめの理由を紹介
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