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沖縄三線の流派とは?野村流・安冨祖流の違いをやさしく解説

こんにちは。
栗山新也沖縄三線教室の栗山です。
三線に興味を持って調べていると、「野村流」「安冨祖流」といった言葉を目にすることがあるかもしれません。
「流派って何だろう?」「どっちを選べばいいの?」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から申し上げると、これから三線を始める方が流派の違いを気にする必要はほとんどありません。
とはいえ、「流派」のことを知っておくと、三線の世界がもっと面白く感じられるようになります。
今回は、これから三線を始めてみたいという方に向けて、流派の大まかな全体像をやさしくお伝えしたいと思います。
なお、それぞれの流派の歌い方や理論についての専門的な解説ではなく、あくまで初心者の方に向けた入門的な内容ですので、その点はご了承ください。

そもそも「流派」とは?
三線は、弾くだけの楽器ではありません。弾きながら歌う「歌三線(うたさんしん)」が基本で、三線と歌は常にセットです。つまり、三線を学ぶということは、楽器の弾き方だけでなく「歌い方」も学ぶということです。
そして、同じ曲であっても歌い方は一通りではありません。長い歴史の中で歌い方にいくつかの系統が生まれました。また、その歌い方を記した楽譜(工工四)にも、系統ごとに異なるものがあります。

さらに、歌をどうやって次の世代に伝えるか——楽譜を整えて目に見える形にするのか、師匠の歌を聴いて身体で覚えるのか——という伝え方の考え方にも違いがあります。
三線の世界でいう「流派」とは、こうした歌い方、楽譜の系統、そして伝え方の違いを受け継いできた系統のことです。
三線の流派はどうやって生まれたのか
現在の三線の流派は、大きく分けて野村流(のむらりゅう)と安冨祖流(あふそりゅう)の二つがあります。このほかに湛水流(たんすいりゅう)という流派もありますが、現在伝承されている曲はごくわずかで、三線を始める方が出会う機会はほとんどないと思います。
ここでは、二大流派である野村流と安冨祖流が生まれた経緯を、ごく簡単にたどってみましょう。
琉球古典音楽のはじまり
琉球古典音楽の基礎を築いたのは、「湛水親方(たんすいうぇーかた)」こと幸地賢忠(こうちけんちゅう)という人物だとされています。湛水親方が確立した歌三線の芸は、弟子たちを通じて次の世代へと受け継がれていきました。
その流れの中で、知念績高(ちねんせっこう)という人物が現れます。知念績高は琉球王府の楽師として活躍し、多くの弟子を育てました。
最初から「流派」だったわけではない
知念績高には優れた弟子が何人もいましたが、その中でも特に重要な二人が、安冨祖正元(あふそせいげん)と野村安趙(のむらあんちょう)です。
二人が活躍していた時代には、まだ流派という考え方はありませんでした。しかしその後、野村安趙が琉球王府の命を受けて工工四の改訂に携わる一方で、安冨祖正元の系統の弟子たちは師匠から受け継いだ工工四を使い続けるなど、楽譜に異なる流れが生まれていきます。
楽譜の違いは歌い方の違いとも結びつき、世代を重ねるごとにそれぞれの系統の個性がはっきりしていきました。やがて「安冨祖流」「野村流」という呼び名が定着し、近代に入ると、それぞれの系統を守り伝えるための団体が設立されるようになり、現在の二大流派の形がはっきりと整っていったのです。
ある日突然「流派」が生まれたのではなく、琉球王国の時代から近代にかけて、何世代もの積み重ねの中で少しずつ形づくられていったというのが実際のところです。
野村流と安冨祖流、具体的に何が違うの?
初心者の方にとって一番気になるのは、「で、具体的に何が違うの?」ということだと思います。ここでは大まかな違いをご紹介します。ただし、それぞれの流派の中にも多様な考え方がありますので、あくまで大きな傾向としてお読みください。
歌の伝え方に違いがある
ここが特に大きな違いです。
野村流では、1935年に歌の節回しや音の高さなどを楽譜に書き表した「声楽譜(せいがくふ)」が作られ、従来の工工四に付け加えて出版されました。声楽譜があることで、楽譜を見れば歌い方の基本が分かるようになり、自宅での復習がしやすくなりました。また、沖縄県外でも学びやすくなりました。
安冨祖流では、歌の繊細な表現を楽譜だけで伝えることには限界があるという考え方から、師匠から弟子へ直接口伝えで教える方法が大切にされてきました。師匠の歌を聴いて、真似て、身体で覚えていくという伝え方です。
もちろん、どちらが優れている・劣っているという話ではありません。それぞれの流派が、歌を正しく受け継いでいくために最善と考える方法を選んできた結果です。また、野村流であっても楽譜だけですべてが学べるわけではなく、楽譜に書かれていない細かな表現やバチ(爪)のさばき方などは師匠から直接指導を受ける必要がありますし、安冨祖流でも工工四は使います。どちらの流派でも、師匠から弟子へ歌を受け継いでいくという根本は同じです。
歌い方に違いがある
同じ曲を歌っても、歌い方にそれぞれの流派の個性があります。それぞれの流派が長い時間をかけて磨いてきたものです。
ただし、この違いは初心者のうちはほとんど分かりません。ある程度の曲数を学んでいく中で、次第に「ああ、こういうところが違うんだな」と感じられるようになっていきます。最初は気にしなくて大丈夫です。
曲目は基本的に同じ
野村流と安冨祖流が演奏する曲目のレパートリーは基本的に共通しています。流派が違ってもお互いで事前に統一する練習をすれば合同で演奏することができる曲もあります。
つまり、「流派が違うからまったく別の音楽をやっている」ということではなく、同じ曲を、それぞれの伝統に基づいた歌い方で演奏しているというイメージです。
流派の中にも複数の団体がある
もう一つ、初心者の方が調べていて戸惑いやすいのが、「会派」や「団体」の存在です。一つの流派の中に複数の団体があり、それぞれがコンクールを運営したり、工工四を出版したりしています。

教室を探す際に団体名が出てくることがありますが、最初の段階ではあまり気にしなくて大丈夫です。通い始めてから、先生に聞いてみれば丁寧に教えてもらえるはずです。
初心者は流派を気にしなくて大丈夫
ここまで流派の違いを説明してきましたが、一番お伝えしたいのは、これから三線を始める方が流派で悩む必要はないということです。
その理由はいくつかあります。
まず、初心者が最初に学ぶ基本的な指の運び方や、三線の構え方、調弦の仕方などは、流派によって大きく変わるものではありません。
また、流派の違いが実感として分かるようになるのは、ある程度の曲数を弾けるようになってからのことです。最初から流派の違いを意識しすぎると、かえって三線を始めるハードルが上がってしまいます。
大切なのは、「この先生のもとで学びたい」「この教室の雰囲気が好きだ」と感じられるかどうかです。流派は、教室を選んだ結果として自然についてくるものだと考えていただいて大丈夫です。
まとめ
今回の内容をまとめると、次のようになります。
- 三線の「流派」とは、歌い方・楽譜の系統・伝え方の違いを受け継いできた系統のこと
- 現在は「野村流」と「安冨祖流」の二つが主な流派(ほかに湛水流も)
- もともとは同じ源流から、何世代もかけて少しずつ分かれていった
- 歌の伝え方や楽譜に違いはあるが、曲目は基本的に共通
- どちらの流派も、師匠から弟子へ歌を受け継いでいくという根本は同じ
- 初心者が流派で悩む必要はなく、教室との相性が大切
三線の世界には、長い歴史の中で磨かれてきた豊かな音楽の伝統があります。流派の違いを知ることで、その奥深さの一端に触れていただけたなら嬉しく思います。
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